夜遅く、皆が寝静まった頃。
彼女は突然やってきた。
泣き虫
「う…う゛っギン゛ー…」
涙を流し、声を荒げながらノックもせずにいきなり入ってくると寝床を広げていた
ギンの前にちょこんと座り、泣きつづけている。
「…。どうしたん?酔っとる?」
「うっう゛…ーっひく」
「そないに泣いてからに」
が何の前触れもなく部屋にやってくるのはいつもも事だけれど、こんなに泣きじ
ゃくってやってくるのは珍しい。
その上、こんなに酔ってやって来るのも………
「酒弱いくせにこんなになるまでに飲んで」
酔ってる割に酒の匂いが全くしない。
ほんの少ししかのんでないはずなのに、こんなになってしまうとは。
「ほら、落ち着きい」
肩を震わせて泣くの頭をよしよしと撫ぜ、落ち着くまでまってやる。
とは死神統学院からの仲で、はボクの事を親友と呼ぶ。
何でも話せて一緒にいたら楽しいし、落ち着くと言う。
けど、ボクはそうやない……。
一通り泣くと気が収まったようで、少し酔いが覚め、ゆっくり話し始めた。
「彼氏、と 別れた…」
ちょうど4ヶ月前、は彼氏と付き合いはじめた。
彼氏は優しくてカッコイイ人で、前々から気にかけていたところ相手から声をかけ
きてくれて、それからしばらくしてから付き合い始めていた。
ずっと順調にいっていると思っていたのに、それは昨日の事。
偶然通りかかった道で彼氏と見知らぬ女性がキスをしている所に鉢合わせてしまっ
のだ。
そして今日、問い詰めると相手は渋々口を開きはじめ、他にも彼女がいるといいだ
した。
しかも4股かけられていて、4人中3番目にスキだという微妙な順番・・・。
「そんで、酔って泣くまで飲んでたってわけやね…」
「そう…アホな女って思ったでしょ?」
「思うてへんよ」
「いいの、自分でもわかってるから…」
鼻をすすりながら赤くなった目をこする。
すると、ギンの手が伸びの目を擦る手を止めた。
「擦ったらアカンよ。これ以上はれたら明日困るんはやで?」
「…うん」
目から腕を放し、腕は力なく落ちていった。
ギンはそっと手を離していく。
の目にはまだうっすらと涙が溜まっている。
「昔っからほんま泣き虫やなぁ」
「どこがっ」
不本意のことを言われムッとしたはギンの耳をを引っ張った。
「いたい、いたい」
「ふん。飲みなおそ」
そう言うと、どこからともなく特大サイズの酒瓶を取り出してきた。
そんなでかいのどこで貰って来たのか…。
見覚えのある酒瓶に首をかしげて見る。
「それ、どうしたん?」
「どうしたんだっけ…んーあっ!」
「?」
「それが…酔って泣いた勢いで更木隊長から奪ったような…」
「あらま」
その時は酔っていて分からなかったけど、酔いの覚めた今思い出したら何て恐ろし
いことしたんだって冷や汗がながれてくる。
「まぁ、いっか。折角だし飲もっとギンも飲む?」
「アカン、は弱いんやからもう飲まんとき」
「いいじゃん、今日だけだから」
「アカン」
「なっ!」
の手から酒瓶を取り上げた。
取り返そうと必死に手を伸ばすが、届きそうにない。
「やーっ!返して」
飲まずにはいられないとでも言うような痛々しい顔をして、必死に取り返そうとす
るものだから、いたたまれない気持ちになってくる。
だから…
だから、こうせずにはいられなかった。
「ギっギン?!」
伸ばしてくるの腕を引っ張り、ギンの腕の中におさめ、優しく抱き寄せた。
腕の中にすっぽりおさまってしまうサイズ。
は腕の中で身を硬くしてピクリとも動かない。
「… ごめんな、好きなんよ…が好きでたまらへん」
「っ……」
もう一度ごめんと小さく呟き、を腕の中から解放した。
ギンは困ったような笑顔で
「もう帰り、これボクから返しとくから」
それだけ言うとかあら背を向けてしまう。
「帰れるわけないじゃない」
「じゃぁ、ボクの気持ちに答えてくれるん?」
ギンは再びの方を振り返った。
見たこともないぐらい強い光を持った瞳とぶつかる。
どう返事していいか分からず黙ってしまった。
「ほら、できひんのやろ?」
「わたし…」
「ええよ。帰り」
そんなこと言われても、帰れない。
こんなの嫌だよ…私はどうしたらいいの?
このままじゃ、きっともうギンと話せなくなくなってしまうし一緒にいられな
い・・・そんなの耐えられない。
思うだけで胸がきゅうって苦しくなって、泣きそうになってきた。
ギンのことでこんな気持ちになるのはこれが始めてじゃない、ずっとずっと前
から知ってる。
そして、長い間胸につかえていた物にようやく気づく事ができた
ギンの事が"好き"なんだと…―
は今にも瞳からこぼれそうな程涙をため、零れ落ちない様ぐっと堪えている
のに気づく。
―――ごめんな、こんな顔させたいんやないんよ
「ギン、帰るね。私ギンが好きだよ」
「ぇ…?」
立ち上がるにギンは目を見開き信じられないという顔をした。
こんなにビックリされると何か恥ずかしいものが込み上げてくる。
顔を背けほんのり頬を赤らませた。
「ほんまに?」
「…ぅ、うん」
「そんなら、はよう言ってくれればよかったのに」
「だってさっき気づいたから…」
そう言うとギンは立ち上がり、の手を取って握りしめる。
「ふっ、さっきって何やの」
くくくと笑いながら、の手に口付けた。
「もう離さへんよ」
「っ、よ…よくそんな恥ずかしい事言える」
恥ずかしくて、手を離そうとするが離してくれない。
「離さへん」
今度は抱き寄せられ、ギンの整った顔が近づいてきてギンの唇が私の唇に
優しく触れていった。
*あとがき*
色々とすいません(汗)