「ちゃーんっ」


         「はっ はいっっ」


         ビクリと肩をちぢこめ、抱えていた箱が床に落ちていった。

         箱の中のものがばらばらと散らばっていく。

         慌ててかき集め、突然声をかけてきた張本人を振り返った。



         「市丸隊長…―」


         「やぁ、ちゃん」









         Anger







         十一番隊との用事を済ませた帰りのこと、たまたま見かけたに声をかければ、予

         想通り、いやそれ以上のリアクションをとってくれた。

         一生懸命に箱の中身を片し、振り向いてくれた表情はなんとも恨めしそうで、笑っ

         てしまった。

         笑うギンにムッと頬を膨らませ、赤くなっていく。



         ―――ホンマ、かわええ反応してくれるわ



         「ご免な、あんまりかわええ事してくれるもんやからつい…ククク」

         「わ、笑わないで下さいっ、誰のせいだとおもってるんですか」

         「ちゃん見たらついつい。ご免な」

         「もういいですよ、市丸隊長に何言ったってまたやってくるの分かってるんですか

         ら。」

         箱を持ち上げ、ほこりを払ってやる。

         ギンは、されるの分かってても、その反応なんや。と言いそうになり、ぐっと飲み込

         む。


         「市丸隊長…もしかして、またサボりですか?」


         三番隊の塔とは大分離れたここでギンと会うなんてまず無いので、サボり魔のギンの

         事を考えるとどうしてもソコに辿り着いてしまう。


         「ひどいわぁ、それじゃぁボクがいっつもサボってるみたいやん。隊長に向かって…

         えらい生意気やなぁ。そんな子には押お仕置が必要や」


         ギンは怪しく笑みを浮かべ、人差し指での額をグリグリと押してきた。


         「やーっやめてください、ごめんなさいっ!」

         「分かればよろしい」


         額を押すのを止めてやる。


         が四番隊に入隊して間もない頃、道に迷っていたところをギンに助けてもらい、それ

         以来こうして見かける度に声をかけてもらえるようになった。



         額を押していた手での頭をポンポンと撫ぜてやる。

         頭を撫ぜられたは見る見る顔を朱に染め、鼓動が普段の倍以上の速さで打ち始めた。


         「どないしたん?顔、真っ赤やで」

         「な、なんでもないです」


         するとギンは中腰になり、何でもないというの目をジッと覗き込んだ。


         「っ……!」


         「ちゃん…もしかして、」


         ギンの言葉にの心臓が飛びはねる。


         「…箱、思いん?」

         「 へっ? 」

         「しゃーないなぁ、貸しぃ 持ったげる」


         抱えていた箱を軽々と奪われてしまった。

         ギンに寄せる恋心がばれてしまったのかと思い、焦っていたは脱力してしまう。


         「ちゃん?」

         「――〜っもういいです」


         全然的外れなことを言うギンに安堵しているのに、心の片隅では残念がっていた。

         そこから小さなイライラみたいなものが生まれてくる。

         怒らしてしもたかな?と思いながら、ギンより大分低い位置にあるを見た。



         ―――怒った顔もなかなか かわええなぁ…どないしょ。



         「そない怒らんといてぇ」

         「怒ってません、というか…なんで私が怒らなきゃいけないんですか」


         ギンを置いて早足で歩き始める。


         「今度久里屋で甘いもん奢るから、機嫌直してぇな」


         ゛甘い物゛という単語にピクリと反応する。



         ―――見かけによらず、ゲンキンな子やなぁ



         そう思うとまた笑ってしまいそうになった。




         の機嫌も直った頃、四番隊屯所近くまで辿り着いた。

         ギンの方を向き直り、


         「ここまでで大丈夫です」

         「中まで持っていくで?」

         「本当に大丈夫です、ありがとうございました」


         深々と礼をし、上目遣いでギンを見上げた。


         「ん?」

         「…あんみつが いいです」


         久里屋のと付けたし、小さな声で恥ずかしそうに言った。


         「なら、そうしよか」

         「はいっ!」


         承諾してくれたギンに顔を輝かせる。


         「ちゃんに好かれるなんて、ボクも幸せもんやなぁ」

         「 ?…何か言いましたか?」

         「んや、なんもないで」

         「はぁ?」



         ―――あぁ、何や おもろい事になってきたわぁ。BR>
            退屈させんといてな、

            ボクも好きやで、ちゃん。







        

















        *あとがき*
         黒ギンのつもりなんです。
         あわー…