が生まれ育った"家"は中流貴族の中で中堅の地位にある。

        恵まれた境で育ったに縁談の話が舞い込んできたのだ。

        というか「婚約を決めろ」と親からも周りからも迫られている状態。


        話によると相手は上格の貴族の当主様、結婚することによって家の立場も良くなり

        地位も向上し、家計は繁栄する。

        の父は大変な野心家だ。

        だから、こんな美味しい話を見逃すはずもない。



        いわゆる『政略結婚』というやつだ。
















        「いやよ、私は恋愛結婚したいって言ってたじゃない!」



        とある屋敷の一角から一際おおきな声が響いた。






        「様・・・そう申されても困ります。旦那様がお決めになった事ですので」


        「絶対、ぜったい嫌!」


        ついさっき聞かされた縁談には拒み続けているのだ。


        「そうおっしゃらず、様のお気に召す相手かもしれませんよ?」


        をなんとかなだめるよう呼ばれた立華はなんとか機嫌をとりもどそうと試みる。

        が、その甲斐もなくは頑として拒み続けた。

        家に古くから使えている立華は困り果て、はぁと大きな溜息をもらす。


        「私だった様には幸せになっていただきたいんです。あんな小さな時からお世話
        さして頂いてるんですから・・・けど、こういう所にも縁ってあるものなのですよ?」


        「それは 分からなくもないけど・・・」


        「・・・ 様」


        立華は悲しげに瞳をふせ、再びを見つめる。

        なんとも悲しげに・・・・・・


        「そんな顔しないでよ・・・はぁ、分かった 会うだけ、会ってダメだと思ったら絶対
        断るからね」

        「まぁ!やっぱり様ならそおしゃってくださると思ってましたわ!」


        立華はぱぁと瞳を輝かせ笑顔を浮かべた。



        ――――またやられた・・・。



        どうにも立華には敵わない。

        物心ついた時からすでにそうなのだが、立華のどうしてもなお願いを断れたためしは

        1度だってなかった。

        両親もそれを分かっていて立華を送り込んできたに違いない。


        「ねぇ、どんな人か知ってる?」


        会うのだからどんな人かぐらい知っておかなくては話にならない。

        嫌だけれど、仕方なく立華に尋ねた。


        「それはお会いになってからのお楽しみなさった方がいいですよ」


        ふふふと意味アリ気な含み笑いをした。

        その笑いに嫌な汗が浮かんでくる。

        こうして笑われるときに経験上ろくな事が起こらないからだ。


        「そんな事いわないで教えてよ」

        「ふふふ。では1つだけ、様も良くご存知なお方です」

        「良く知ってる人?」


        上格の貴族で知ってる人・・・

        護廷十三番隊には沢山の貴族がいて、予想もつかない。


        「きっとお気に召されます」


        自身マンマンにそう言われますます怪しい。

        それから立華は会うまで本当に何も教えてくれなかった。


        「心配なさらずとも当日には様にぴったりな振り袖をご用意いたしますから」

        「そんなの心配してないから」

        「うーん・・・やっぱり赤かしら?黒も素敵だし・・・桃色なんかも可愛らしくて」

        「聞いてない」


        もう衣装の事で頭がいっぱいな立華に今度はが溜息をもらした。

        こうなると彼女を止められなくなってしまう。


        「あんまり張り切りすぎないでよ?」


        机の上に置いてある饅頭をつまむと口の中に一口でほおりこむ。



        「またそんなトコおっしゃられる。様の大事な大事な縁談なのですよ?」

        「はぁ・・・」

        「コレが張り切らずにいられつものですか」



        当日の光景が目に浮かんでくる。

        きっと普段よりずっと朝早くに起こられて、恐ろしい程の時間をかけて支度させ

        てしまい縁談中に眠くなってしまいそう。

        立華には悪いけれど、会う日までに断る理由をかんがえなくては。