どう返答していいのか困惑に満ちた表情を浮かべた。


         「あの、わたしはこれで……わっ!」


         逃げようとするの腕を捕まえた。

         驚くに、

         「今日は逃がさぬ、時は十分に経った…婚約の返答を聞かせてはくれぬか?」


         腕を掴んだまま、逃げることのできないぐらい強い眼差しをに向ける。


         「それは……」


         親が決めた相手と政略的な結婚なんてしたくなくて、恋をして相手と思い合

         って一緒になりたい。

         だから相手が誰であろうと断るはずがここまでズルズルやってきてしまった。

         それに反して、の心は日に日に白哉へ惹かれていっていた。

         好きなのかと聞かれれば困ってしまうけれど、その感情に近いものが生まれ

         ているのも確かで…


         「は…好き合う者同士で結婚したいのか?」

         「…はい、そうです」


         素直に返事を返す。

         誰だってそのはずだから。


         「朽木隊長もそうではないのですか?」

         「そうだな…」


         少し寂しさの纏う瞳に、前妻の緋真様が浮かんできた。

         きっと触れてはいけないことなのだろうと思った。


         「ならば、私を好きになればよい」

         「え…今何て…」


         大きく瞳を開かせ、その大きな瞳いっぱいに白哉が映る。


         「何度もいわせるな」

         「ご、ごめんなさい」

         「私のことを好きになれば、の望む好き合う者同士の結婚ができると言

          っておるのだ」


         は更に目を瞬かせた。


         「それは…そうですけれど、好き合う者同士って…朽木隊長もわたしを好き

          ならないといけないんです…よ?」

         「案ずるな、既にお前を好いている」

         「すっ………」


         好いていると言われるも、突然過ぎる告白に嬉しいなどの感情いぜんに疑問

         が生まれてきた。

         白哉に好かれるような要素を持っているとは到底思えなかったから…。


         「何だ、その目は疑っておるのか」

         「…だって、そんな好いているなんて」

         「ほう…分からぬのなら分からせていあるまでだ」


         じりじりと近づいてくる白哉から、じりじりと同じペースで後ずさりする。


         「だ、大丈夫ですっ 分かりました 疑ってなどおりませんかからっ」


         動きが止まりホッとする。

         逆に白哉は惜しそうに眉を寄せた。


         「朽木隊長の…好きは何番目の好きなんですか? わたし…二番や三番の好

          は嫌なんです、一番の好きじゃないと嫌です」

         「では、一番にさせてみるのだな」
         「なんですか…それ?」


         不安げに白哉を見上げる。

         白哉はフッと笑い、


           「ならば競ってみるのもよかろう、どちらが互いの一番とやらになれるか」

         「の、望むところです」


         勢いに任せて一つ返事をしてしまった。

         何だか丸め込まれたと言えなくもない。


         「では、婚約すると言う事でよいな」

         「ぇ…そういうことになるんですか?!」

         「そういうことなのだろう」


         やはり丸め込まれと確信したときにはもう遅かった。












         何時の間にか婚約したことになってしまったおり、家に帰ったを豪勢な祝

         い料理が用意されていた。


         「とうとう決心されたのですね、立華は嬉しゅうございます」

         「立華…」


         涙ぐむ立華に、決心どころか気が付けばこうなっていた。

         とはとてもじゃないけどいえなかった。


         「そんな、大袈裟な」

         「何をおっしゃってるんですか、この縁談が駄目にだったらもうこの先ヒロコ様

          は嫁に嫁げないような気さえしておりましたのに」

         「し、失礼なっ嫁げるわよ」


         仮にも主に言う事ではないだろうと苦笑する。


         「ねぇ、相手の一番好きな人になるにはどうしたらいいの?」

         「それは殿方のことでいらっしゃいますか?」

         「…うん」


         立華はそうですね、と呟き考え始めた。

         けれど、考えるのを直ぐに止めニコリと意地悪く笑みを浮かべる。


         「なに…?」

         「様からこのような相談をされる日がくるとは、さすが朽木家の当主でい

          らっしゃるというべきか」

         「〜…いいから教えてよ」

         「やっぱりお教えしないでおきますね」

         「ちょっとっ立華ぁ」


         立ち上がる立華を視線で追い、むっと頬を膨らませる。


         「もうすこし恋でお悩みになられる様を見ていたいんです」

         「酷いっ鬼、死神!」

         「死神は様でしょうに」


         その夜、は一晩中悶々と一番になる方法を考えた。

         もうここまできたら、白哉を好きになって相手にも好いてもらいたい。

         それに、ここまでしてしまうのは既に

         白哉が好きだからなのかもしれないと思った。








        

















       *あとがき*
        また良く分からんことに;汗