隊長格のギンの屋敷はやたら広く、一人で住むには大きすぎる。
その無駄に多い部屋の中で、自分の部屋から少し行った所にの部屋を用意させた。
悪夢
夜も更け、雲ひとつない夜空。
そこには欠け始めた月が昇り、辺りの漆黒に光を差し込めている。
そんな夜更け、ギンは月見酒に廊下へ出てきていた。
月を見上げながら酒瓶の酒を飲もうとしたとき、微かに、いや確かにうなされるような
声が聞こえて来た。
「何や…?」
この近くにいるのはあの子だけだ。
酒瓶を腰に掛けなおし、の部屋に足を進めた。
「 ? 」
戸越しに声をかけてみるが返事はない。
しかし苦しそうな声が部屋の名kから聞こえてきている。
「入るで…」
戸を開け、暗い部屋に目を細めた。
そこには苦しそうに声を上げ、寝返りをうつの姿が目に映ってきた。
「ぅ…ん…う゛…はぁ、はぁ」
「……。」
「…めて…、ぃ…ぅ」
の眠る布団に近づき膝を折る。
間近で見る程苦しそうな表情、額からは汗が滴り落ちていた。
悪夢から開放するために布団の上から体を揺すってやる。
「起き」
「うぅ…ん…?!…はッやぁっ!!」
今まで聞いたことない程大きな声を上げ、ギンを全身の力を込めて押しのけた。
「ゃ、や…め……て…」
カタカタと全身を震わせ、きつく布団を握り締めている。
ギンを誰かと間違えているようだった。
「、しっかりし」
「やっ…!!」
震えるに怯むことなく腕を掴み、瞳を見つめた。
「ぁ……ッ…ゃ」
「悪い夢でも見てたん?」
ギンと気づいてもなお震えつづける腕。
掴んでいいた腕をそっと離し、「ごめんな」と言い部屋を出ていった。
「何してんねん……」
腕を掴んだ手を見つめ、感触を確かめるように握りしめた。
震える腕にボクがしてやれる事は何もない。
きっと今もは部屋の中で震えている。
たった数日住ませたぐらいで情でも沸いてしまったんやろか…このボクが?
まさか…そんなわけあらへん。
あったら困るわ、そんな感情とっくに無くなってるはずや。
輝く月を見上げ気を惑わせた。
*あとがき*
そろそろ喋るかも。