かくして十一番隊に入っただが、その恐るべき世界に目を疑うばかり

        で私の考えは相当甘いということを思い知らされた。












        「私、死んじゃうかもしれない・・・」


        あの十一番隊に入れられたを心配して様子を見に来てくれた灯里につ

        いつい愚痴ってしまう。


        「大げさなー。大丈夫よ、ここでもう2ヶ月もやってこれてるんだから」

        「それは、そうだけど…」


        もうここに来て2ヶ月がたとうとしていた。

        よくここまでもったと思うけど、毎日いろいろ限界だった。

        差し入れの羊羹を一口で頬張る。

        疲れているときに甘いものに限るとはこの事で、身にしみるような幸せ

        で満ちていく。

        十一番隊の隊員と言う事だけあって、新入隊員でも他の隊だと席官とし

        て通じるぐらいな実力を持つ者もいる程。

        そんな者達の中にいると元々ない自信は欠片もなく砕けていった。

        その上、だけ特別メニューが隊長直々に与えられ、毎日ありえない程

        の訓練を行わさ一日中動きっぱなしなのだ。

        筋肉痛や肉離れに苦しめられる毎日。


        「あっ、更木隊長ってどんな人?」

        「どんな人って・・・凄い人」

        「そうじゃなくて、性格とか」

        「性格?んー・・・いい人ではある と思う」

        「ふうん」

        「何?」

        「ううん。あ、そろそろ戻らなきゃ」

        「え?もうそんな時間?」


        時計を見上げるともうそんな時間をさしていた。


        「しっかりがんばんなよ?折角十一番隊に入れてもらったんだから、ね?」

        「・・・ハイ」


        立ちあがる灯里を見上げ、寂しそうに見あげた。


        「もう、そんな顔しないの」


        灯里は困ったような表情を浮かべる。


        「けどちょっと安心した。」

        「?」

        「更木隊長優しいみたいだし」

        「へ?」


        隊長のごとにそんな要素を見出したというのか・・・。

        去っていく背中を名残惜しそうに見つめ、姿が見えなくなるまで手を

        振り続けた。








        十番隊配属になった灯里は、大変だけれどやりがいがあって大変だけど楽

        しいと言っていた。

        入って早々同じ隊に彼氏が出来たらしい。

        最近前にも増してキレイになっている。


        「それに比べて私は・・・」


        毎日の鍛錬のおかげで痩せて来たものの、乙女らしからぬ筋肉がつき始め

        てしまっている。

        それに、髪の毛をセットしても化粧してもスグに崩れてしまう為、もう諦

        めて初めからしなくなってしまった。


        「はぁ・・・」


        ため息と同時にスパーンと気持ちいいぐらいな音を立て襖の戸が勢いよく

        開けられた。


        「なっなな 何?!」


        驚いて振り向くと隊長の剣八の姿がそこにはあり、仁王立ちでを睨んで

        いる。

        恐ろしくてとてもじゃないけど直視できない。


        「オイ、いつまで休んでるつもりだ?」


        ドスの効いた声が振ってくる。


        「い、今 いきますっ!」

        「っ!!痛ぁー」


        慌てて立ち上がった為、思わず机の角に足の小指をぶつけてしまった。

        あまりの痛さに半泣きになってしまう。


        「・・・何やってんだ!」

        「ぅう…すみま゛ぜん」


        ひょこひょこと片足で飛びながら廊下へでた。



        ―――うぅー・・・間抜け過ぎる・・・最悪だ。



        いつも剣八の後をついていくのは一苦労なこと。
        と比べて剣八の足幅は大分大きく、小走りにならなければ付いて行けな

        いから。

        コッチの身にも欲しい。




        「あの、今日は・・・」

        「とりあえず素振り2000回しておけ。終わったら剣術訓練だ」

        「ぐぇ 了解しました」


        素振りは数々行われる鍛錬の中でも受身練習の次に嫌いなもの。

        あの二の腕が吊りそうになる感覚がどうもなれなくて、耐えられない。


        「何だ?」

        「いえ、なんでもない です」


        こんなことしてて本当に強くなれるのか不安がつもる一方で、

        自慢に出来ることだはないけれど、剣術の先生にココまで出来ない生徒は

        学院の長い歴史の中でもかなり珍しいとまで言われた程のもの。

        一筋縄でいくはずもないわけで・・・

        先生のため息と困り果てた顔は何百回も飽きる程見てきた。

        その顔を見るだびに申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。




        剣八隊長にもあんな顔させてしまう・・・。

        隊長、ごめんなさい




        とぼとぼと歩くを振り返ると、がしょげているのに気づいた。

        眉をしかめながら少しの間を見つめ、また前を向きなおして歩き始めた。